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冬の北陸 体験の旅

冬の北陸 体験の旅 福井県、石川県、富山県 カニと工芸に ほっこり

 「弁当忘れても傘忘れるな」とは、雨や雪が多い北陸では冬の合言葉だという。

 金沢市出身の同僚の勧めで防水・防寒ブーツで完全防備。ところが降り立った福井駅は、まさかの晴天。数日前、この地方に降った初雪はどこ?コートもいらない陽気で拍子抜けしたが、新しい魅力に触れる旅にはうってつけ。超有名な兼六園や東尋坊には行かず「おいしい、楽しい」を体験する計画だ。

 まず冬の味覚の王者、越前ガニを味わいに向かう。福井県坂井市の温泉宿「みくに隠居処(じょ)」では、食べるだけでなく目利きを体験できる。カニを唯一、皇室に献上する三国港のすぐ近くだ。おいしいカニの選び方を教えてもらえるなんてと、ワクワクしながらのれんをくぐった。

 まず目に飛び込んできたのは立派な水槽。底には大きなカニが何匹も折り重なっている。早速、伊藤俊輔社長(31)によるレクチャーが始まった。同じ三国港ブランドのタグ付きでも品質には差があり、見分けるポイントは3つ。1つ目は「甲羅に黒い粒々が多いほどいい」。粒々の正体は甲羅に寄生するヒルの卵で、悪さはしない。脱皮から時間がたって身が詰まった証拠だとか。後の2つは…。実際に足を運んで聞いてください。

 ポイントを覚えたら実践だ。トロ箱の4匹を、品質が高いと思った順に並べていく。表も裏もしっかり見て決めた順位は大正解!1キロ4000円という地場産の塩を使ってゆでてもらう。

 ほどなく運ばれてきた皿にはオレンジ色に光り輝く宝石が。社長らスタッフが手際よくさばいてくれるから客は食べるだけ。口に含めば脚の身はホロホロと、みそは驚くことにサラッと溶けていく。深い甘みにうなる間に、殻の山ができていた。

写真

 幸せな潮の香りに後ろ髪を引かれつつ、石川県小松市の「九谷セラミック・ラボラトリー」へ。伝統工芸、九谷焼を多角的に楽しめる施設として5月にオープンしたばかり。今月竣工(しゅんこう)式があった国立競技場を設計した隈研吾氏が手掛けた平屋建築は、木組みの高い天井から優しい光が漏れ、ギャラリーを彩る新進作家たちの作品を包んでいた。

 電動ろくろ、手びねりもあるコースの中から、絵付けを体験した。私は白い丸皿に、パンジーの絵を施すことに。ごく細い筆に黒い絵の具を取り、アウトラインを描いていく。色付けは、絵の具をぽってり載せるのがきれいに発色させるこつ。内側は黄色、外側は紺青(こんじょう)に。失敗しても拭き取ってやり直せるので、画力がなくても安心だ。葉っぱを緑に塗り、裏に赤と紫を使って名前を入れたら「九谷五彩」と呼ばれる5色を使った作品の完成。焼成後、送られてくるのが楽しみでならない。

 工芸品といえば富山県高岡市は前田利家の嫡男、利長の代から続く鋳物の町。老舗メーカー「能作(のうさく)」は合金の材料にされてきた錫(すず)を100%使い、柔らかさを逆に生かす製品を編み出した。かご形の曲がる食器など、モダンなデザインで人気を博す。カフェも備えたスタイリッシュな本社工場に足を踏み入れると、天井まで一面に鋳物の型が展示してある。すべて現役で、本来なら企業秘密。隠さずに見せるのは地域と共に発展する決意の表れだという。

 工場では職人のすぐそばで見学でき、ぐい呑(の)みなどの製作も体験できる。私は開業5周年を記念した北陸新幹線形ペーパーウエートを作った。砂を押し固めて型を作り、スタッフに熱した錫を流し込んでもらう。水に入れるとあっけないほどすぐ冷えて固まり、手の中へ。小さいながらずしっとくる重みに、歴史が凝縮されている気がした。

 地元の人たちの温かさにほっこりしながら回った冬の旅。地酒も飲んだし、寒ブリも味わった。でもまだまだすてきな出合いがありそうな予感。かばんに傘をしのばせて、また来よう。

 文・写真 福永裕子

(2019年12月27日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
福井へは名古屋から特急しらさぎで約2時間10分。
米原まで東海道新幹線利用なら約1時間40分。
みくに隠居処へはJR福井駅からえちぜん鉄道三国芦原線で約50分、三国港駅下車。
九谷セラミック・ラボラトリーへはJR小松駅から小松バスで約20分。
能作へはJR新高岡駅から世界遺産バスで約10分。

◆問い合わせ
福井県観光連盟=電0776(23)3677、石川県観光連盟=電076(201)8110、とやま観光推進機構=電076(441)7722。

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前日までに要予約。
2500円(税別)。
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要予約。
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