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中国・杭州 「倹約」のアジア大会

2023年07月11日

巨大な体育館の手前に飾られた「節倹」の文字=先月、中国浙江省杭州市で

巨大な体育館の手前に飾られた「節倹」の文字=先月、中国浙江省杭州市で

 84億元(1680億円)。9月に中国浙江省杭州で開かれるアジア大会で、新たに建設された体育館・水泳施設、スタジアム、eスポーツセンターの主要3会場の建設費だ。外国メディアに公開された設備を参観し、豪華さに舌を巻いた。

 体育館は流線形の鉄骨をつなぎ合わせた複雑な造りで「チョウの羽化」をイメージ。流線形の運動施設として、中国人が好む「世界最大」の冠も付く。水泳施設ではプールの汚れを掃除するロボットが休みなく動き、中国の科学技術をPRする。

 杭州大会は新型コロナウイルスの感染拡大で昨年秋の予定から1年延期された。すでに市内で聖火の採火式が行われるなど開催に向けムードが高まる。

 次回の愛知・名古屋大会の予算計画は850億円。建設費の高騰を受けて選手村整備を見送った。世界各地で開催された五輪でも、開催後の施設の維持負担が課題になっている。

 体育館の外には「節倹(倹約)」の文字が掲げられていた。3会場だけで日本の予算の2倍近くを費やす中国。余計なおせっかいだが、大会が「負の遺産」とならないか一抹の不安を感じた。 (石井宏樹、写真も)