2023年11月01日
大勢の若者が圧死した雑踏事故から1年がたったソウルの梨泰院(イテウォン)。ハロウィーンの週末、仮装して訪れた人は少なく、「不謹慎ではないか」という視線が向けられる空気があった。
そんな中、ひときわ目を引く白塗りメークの一団が現れた。ついさっきまで事故現場で追悼のリストバンドを配布していた市民団体だったので驚いた。その中に、事故で救急搬送された李周炫(イジュヒョン)さん(28)を見つけた。遺族とともに記者会見を開き、政府に被害者支援を促す姿が、印象に残っていた。
彼女たちは笑顔を振りまきながら飲食店街を闊歩(かっぽ)し、店先や路上で出会った若者や外国人にリストバンドを手渡した。みんな大喜びで一緒に写真を撮った。李さんは「惨事が梨泰院やハロウィーンへの嫌悪につながってはいけない。『遊びに行ったことは罪ではない』と行動で見せたかった」と話した。
仮装は死者との交流を描く映画「リメンバー・ミー」にちなんだもので、「亡くなった人を記憶しながら一緒に遊ぶ」という意味を込めたという。犠牲者を悼みつつ前を向く若者たちの姿に、梨泰院の街を再生させる力を感じた。(木下大資)