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メキシコ・シウダフアレス たかが、されど「40セント」

2024年02月09日

米国とメキシコの国境にかかる橋を渡る人たち

米国とメキシコの国境にかかる橋を渡る人たち

 メキシコ北部シウダフアレスで米国への移民希望者の取材をした帰り、米国との国境にかかる橋を歩いて米エルパソに戻った=写真。橋には車道と歩道があり、歩行者は1人につき40セント(約60円)を払う。

 橋の中ほどまで歩くと、両国を隔てるリオグランデ川が見下ろせる。少し離れた米国側には、トランプ前大統領が建設を指示した高さ約9メートルの「国境の壁」。米メディアによると、エルパソでは近年、200人以上の不法越境者が壁を乗り越えようとして足の骨を折ったり、頭部にけがをしたりしている。密入国をあっせんする業者がメキシコ側にはしごをかけて壁をよじ登らせ、米国側に転落させる事例が多数報告されたという。

 米国での生活に望みを懸け、危険を冒してでも密入国を試みる中南米からの移民希望者は後を絶たない。パスポートなどを持たない彼らにとって、通行料40セントの橋は渡りたくても渡れない遠い存在なのだろう。

 メキシコ側の川岸で、移民希望とおぼしき男性が手を振り、何か叫んでいた。聞き取れなかったが「俺も連れて行ってくれ」と言っているように見えた。 (浅井俊典、写真も)