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北京 人民日報回収騒ぎ

2023年04月10日

 新聞記者の一日は新聞を読むことから始まる。中国では共産党機関紙「人民日報」の評論や記事の扱いから党の意向を把握する。3月末のある朝、同紙が届かなかった。何かの問題があって回収されたらしい。

 キオスクのような雑貨店に置いてある新聞を求め、自転車で街じゅうを探し回った。売り切れたり回収されたりでなかなか見つからない。10キロほど自転車をこいだ末、束ねられた新聞の中から人民日報を探し当てた。

 回収騒ぎは、中国国内からは通常は閲覧できないツイッターで話題となったが、国内のネット上では情報が流れない。回収前後の新聞を見比べると、1万文字以上の評論記事の中、たった3文字が抜け落ちていた。

 その3文字は「習近平(しゅうきんぺい)」。本来は「習近平同志を核心とする」と記述するはずが、「同志を核心とする」となっていた。日本の新聞でも表記ミスはあるが、回収までするケースは少ない。発行部数300万部超の同紙を全国で回収したとされ、影響は大きい。異例の3期目に向けて、権威付けを進めてきた習国家主席。その絶大な権威を印象づける回収騒ぎだった。 (石井宏樹)