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韓国・済州島 悲しき歴史 重なる地

2023年04月28日

 「韓国の沖縄」。そんな触れ込みで知られる韓国南部の済州島(チェジュド)。本土より温暖な気候に、多くの観光客が集まるリゾート地のイメージが強いが、つらい歴史を経験してきたという面も沖縄との重要な共通点だ。

 「昔は罪人の流刑地で言葉も通じない未開の地。本土からは『変な外国』と映る」。韓国紙ハンギョレの記者で、済州島で三十年以上取材を続ける許湖峻(ホホジュン)さんはそう語った。「アカ(共産主義者)の島」と軍が決め付け、罪のない多くの島民を虐殺した一九四八年の「4・3事件」の背景には、こうした差別意識もあったとみる。

 事件当時、島民が身を隠した洞穴の一つを訪れた。大人一人がやっと通れる入り口の奥に、数十人が身をかがめて入れる空洞が広がる。ひんやりとした地下の空気を吸い、恐怖におびえる人々を想像しながら、戦争中に同じように人々が隠れた沖縄のガマを思い起こした。

 軍事政権の間「4・3事件」の真相は隠され続け、今も一般に浸透しているとは言い難い。「観光は楽しみつつ、少しでも島民の痛みを知ってほしい」。訪問者に対する許さんのささやかな願いだ。 (上野実輝彦)