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北京 「コロナ」は禁句に

2023年05月02日

 中国の就職状況について今夏卒業予定の女子大学生を取材していた時のこと。喫茶店でコーヒーを飲みながら話していた彼女が、新型コロナウイルスの話題になると突然黙り込み、スマートフォンを取り出した。不思議に思いながら彼女のスマホをのぞき込むと「『コロナ』という言葉は使わない方が良いと思う」と打ち込んであった。

 行動制限の厳しい「ゼロコロナ政策」に対する批判などで当局が神経をとがらせていることに配慮したという。とはいえ会話は特に政府批判をしていたわけではなかったので、その時はやや神経過敏ではないかと思った。しかし別の友人と会った時にこの話をすると、友人も「私も交流サイト(SNS)で『コロナ』は使わない。この手の話題は、コロナを連想する『マスク』に置き換える」と話した。

 中国では政府批判をネットに書き込むとすぐに削除され、摘発の対象となりかねない。とはいえ、「コロナ」すら気軽に話題にできないとは。友人は「SNSに書き込むこと自体が減った」と話す。庶民が自主規制するほど言論統制が進んでいることに空恐ろしさを覚えた。 (新貝憲弘)