2023年06月06日
ワシントンに赴任して1年がたつが、いまだにチップ文化になじめない。厄介なのが、チップ箱の代わりに登場したタブレット端末のデジタルチップだ。
店で持ち帰りのサンドイッチやコーヒーを注文してカードで支払うと、レジ係がタブレット端末を私に向ける。「チップはどうしますか?」の文字の下には15%、20%、25%の表示。何となく払わないといけない気分になる。コーヒーチェーン店でマグカップを買っただけでチップ表示を突きつけられたときには、さすがにうんざりした。
米国では新型コロナウイルス禍でデジタル決済が進み、チップのデジタル化も一般的になった。コロナで給料減に苦しむ飲食店員らには気前よくチップを払おうという動きに便乗し、チップ文化とは無縁だったレジ係などのサービスでもチップを求めるようになっているという。
ただ、行きつけのハンバーガー店ではチップを求められたことがない。注意して見ていたら、店員さんが端末に「チップの必要なし」と打ち込んでくれていた。心遣いがうれしくて、チップ箱に現金をそっと入れる。やっと心からチップを渡した気分になった。(浅井俊典)