【本文】

  1. トップ
  2. コラム
  3. 海外の風
  4. 中国
  5. 北京  素顔見せぬ「外交術」

北京  素顔見せぬ「外交術」

2023年11月12日

北京の釣魚台迎賓館で、福田康夫元首相と握手しながら報道陣に撮影を促す王毅外相(右)

北京の釣魚台迎賓館で、福田康夫元首相と握手しながら報道陣に撮影を促す王毅外相(右)

 「日中関係の改善にともに努力しましょう」。北京の釣魚台迎賓館で開かれた日中平和友好条約締結45周年を祝う夕食会を前に、中国の王毅(おうき)外相が福田康夫元首相に穏やかに語りかけた。会食前に控室で両氏が面会する様子をたまたま目にしたが、緊張した日中関係とは裏腹に和やかな雰囲気だった。

 福田氏の父が条約締結時の首相、赳夫氏だったこともあるだろうが、厳しい対日批判で知られる王氏は時折冗談も交えながらリラックスした様子で応対。続く夕食会もあちこちのテーブルで談笑する様子が見られ、昨年同じ場所であった日中国交正常化50周年の会食と比べ、明らかに対日関係が改善していると感じた。昨年は日中関係そのままにピリピリとした雰囲気で、出席者同士の会話もほとんどみられなかったからだ。

 前外相の更迭により、いったん退いた外相職に復帰した王氏。日中外交筋が「どんな役柄も完璧に演じることのできる役者」と評したように、ニュースで見るこわもてな王氏と控室で見た温和な王氏は確かに別人。どちらが本音か分からないが、場の空気を変えた「外交術」には舌を巻いた。 (新貝憲弘、写真も)