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韓国・梁山 書店のある村の分断

2023年12月18日

11月25日、韓国・梁山で、自身が開いた書店で記念撮影に応じる文在寅氏(左から3人目)

11月25日、韓国・梁山で、自身が開いた書店で記念撮影に応じる文在寅氏(左から3人目)

 韓国の文在寅(ムンジェイン)前大統領が退任後に住んでいる慶尚南道梁山(キョンサンナムドヤンサン)市の平山(ピョンサン)村。今年4月に文氏が私邸近くに開いた書店は、観光地のようなにぎわいだった。

 文氏本人が握手や記念撮影に応じる時間があり、来店者が列をつくった。エプロン姿でレジに立ち、笑顔で対応する様子はさながらアイドルの「ファンミーティング」のよう。週末は午前と午後に1度ずつ姿を現すそうだ。会場整理を担うボランティアは、ソウルなど全国から通っている支持者たち。近隣の食堂の従業員は「書店ができてお客さんが増えた。住民もみんな前大統領が好きですよ」という。

 一方、警察が警備している村の入り口では、保守団体が大音量のスピーカーで文氏をののしっていた。近くで食堂を営む女性は「平日もこんな調子で、商売にならない」と嘆いた。

 任期中の文氏は不動産政策の失敗などで保守層や中間層の怒りを買いながら、強固な支持層(ファンダム)に囲まれて批判を受け付けない「ファンダム政治」ともやゆされた。そんな分断の構図が、山あいの小さな村にそっくり持ち込まれているように感じた。 (木下大資、写真も)