2009年12月02日
「彼らは、紛れもないヒーローだ」。米テキサス州フォートフッド陸軍基地で起きた乱射事件。会見で、犠牲になった兵士たちを悼みたたえる言葉が相次いだ。
米国人はこの言葉が大好きだ。事件では、数発の銃弾を浴びながら、容疑者に発砲した女性警官も「ヒーロー」として絶賛された。
一方で、基地近くの帰還兵が集まるカフェで出会った兵士(22)は「仲間は皆、この言葉が嫌いなんだ」と打ち明けた。十四歳の時に「9・11」を目の当たりにし、国のために戦いたいと思い続けた。念願かなって陸軍に入隊。二十歳でイラクに一年間派遣されたが、戦場は地獄だった。
任務で道路に爆弾を設置し続け、無実の市民を巻き添えにした。自分が殺した少女の顔が今も目の前に鮮明に現れ、悪夢や自傷行為を繰り返す。戦争の長期化で、基地には彼のように心を病んだ兵士が増え続ける。「ヒーロー」の称号の陰で、その代償の大きさを実感した。 (加藤美喜)