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ジェーラム 血縁の下に固い結束

2010年11月05日

 ラマダン(断食月)明けの祭礼中、パキスタン人の助手から実家に招待された。イスラマバード南東約80キロのジェーラム県の農村。回廊型の家の広い中庭には、里帰りや近所に住む親せき20人ほどが集まり笑い声が絶えなかった。

 助手によれば、農業を生業(なりわい)にする彼の部族は200年以上前、豊かな暮らしを求め北西部から各地へ。適齢期になると部族内の相手と結婚、後世に血を残し固いきずなを守ってきた。例えば、助手の父親と叔父は同じ部族の姉妹を妻に迎え、助手の兄弟3人はその叔父の娘を伴侶に選んだ。

 実家訪問の前日、元情報機関トップに最近の治安安定の理由を尋ねたところ「当局が自爆テロを実行する部族を特定、長老との会話のチャンネルを確保したため」と。助手一族の年一度の団らんに触れ、それが何となく理解できた。この国の人々の笑顔に最も出会えた出張だった。 (林浩樹)