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カンクン 大音量も伝統の手法

2011年01月16日

 乗り合いバスの車内で男がスペイン語で叫ぶ。「英語の歌もあるぞ」。肩からさげたかばんの中のスピーカーが、大音量で音楽を奏でる。30年前に射殺されたジョン・レノンの代表曲「イマジン」も流れた。とにかく音が大きすぎ迷惑至極。乗客の誰かが制止するかと思ったが、全員、静まりかえったままだ。

 15分ほどして、事態がのみ込めた。男がかばんからCDの束を取り出すと、乗客は文字通り老若男女とも先を競って硬貨を差し出し、買い求めた。CDの車内販売だった。運転手も上前をはねての黙認に違いない。

 国連気候変動枠組み条約の第16回締約国会議(COP16)が開かれたメキシコ東部カンクン。20カ国・地域(G20)の一員で議長国として手腕を示したメキシコだが、市民の間には、他人への「騒音」の押し付けを嫌う欧米とはひと味もふた味も違う伝統が残されていた。 (嶋田昭浩)