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ロンドン 納得の幕引きにホッ

2011年09月08日

 劇作家シェークスピアの多くの作品が初演されたグローブ座。ロンドンのテムズ川南岸に16世紀当時の木造円筒形の姿で再建されて15年目を迎えた。この夏も観光客が大勢訪れている。

 ある夜、桟敷席に座っていると、隣の初老の英国人男性が「シェークスピアは難しくないですか」と幕あいに話し掛けてきた。「観光に来た日本人」が試されているのかと思い、「小難しいせりふですが、半分はわかる」と答えた。意地を見せたつもりだった。

 すると男性は意外だという顔を見せて、作品のセリフがどれだけ奥深いか、なぜ観客の想像力が必要になるかを親切に説き始めた。

 こちらが「日本にも人間をよく描いた歌舞伎や狂言があります」と口を挟むと相手はけげんな顔に。ぎくしゃくした。最初から「半分しかわからない」と正直に答えたほうがよかったかもしれない。

 聞けば、男性は劇場の再建を寄付で支え、いまも運営に携わる理事の一人だった。英国ではシェークスピアは「教科書に出てくる作家」として、誰もが知るが、舞台を見る人は限られるという。

 「なるほど教科書に押し込めるのはもったいない」と返すと、男性はようやく納得した表情を見せた気がした。この日の上演作品は「終わりよければすべてよし」だったけれど。(松井学)

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