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ソウル 北ほど雨は恨めしい

2011年09月25日

 今夏の韓国は雨にたたられた。豪雨で50人以上が犠牲になった。8月の週末で初めて晴天に恵まれた土曜日、天気予報は「お出かけ日和」とはやしたてたが、夕方には私も含めた外出客が激しい雨に襲われた。

 ソウルで脱北者の女性と会った日も夕立に降られ、近くの焼き肉店に逃げ込んだ。彼女は窓の外を見やり、故郷を心配した。

 彼女いわく、北朝鮮で大雨の際、優先すべきは「一号管理」という作業だ。「一号」とは故金日成主席、金正日総書記を指す。彼らが写ったのは「一号写真」、記述があれば「一号図書」と呼ぶ。

 家に浸水の危険が迫るなか、まず守る対象はこの一号。肖像画は各戸に掲げられ壁にくぎなどで固定。外すのは手間なのに食料や家財を手に逃げ出すことは許されない。大雨の後、人民班(隣組)で反省を迫られ、自己批判書を書かされる。

 水害復旧には住民、軍人、大学生らが動員されるが、金父子と関連ある施設や公的機関に集中投入される。住民地域への支援はまずない、と彼女。

 今夏は北朝鮮も水害に見舞われた。一方、金総書記は海辺の別荘に滞在し豪華ヨットで避暑したと伝えられる。そんな「一号」を守らされる住民たち。韓国以上に「恨めしい雨」だったに違いない。(辻渕智之)

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