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ハノイ 開発 不満の矛先は…

2012年02月06日

 ベトナムの首都ハノイでは、そこかしこでマンションやオフィスビルの建設現場に出くわす。「どこに行っても工事、工事、工事ですよ」。現地で知り合った20代のベトナム人男性は言った。

 経済成長に沸き返るベトナムの今を象徴する言葉だ。さぞ発展する母国を誇らしげに感じているのかと思いきや、「物価がどんどん上がっていく。5年間で倍近くも上昇したんですよ。生活が苦しい」と訴えた。

 そして、洋服や雑貨などを売っている屋台が、所狭しと並んだ屋外市場を指さした。地元の人たちが熱心に品定めしている。「あと少しであの市場はなくなります。新しいマンションが建つからです」。男性の自宅近くの市場も取り壊しが決まったという。新しいビルはテナント料が高く、商店主らは別の場所への移動を余儀なくされているという。

 男性の説明によれば取り壊しを決めたのは共産党。共産党一党支配の国ゆえ、党の影響力は大きい。ただ、住民に土地使用権を認めるなど、民主的な面も兼ね備え、「独裁」的なやり方で開発を進めているとは限らない。

 それでも男性は「党には誰も反対できません。社会主義国ですから…。やっぱり自由主義がいい」と漏らした。どうやら不満の矛先は、体制のあり方自体に向いているようだった。(寺岡秀樹)