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北京 腰ある日本通じわり

2012年11月16日

尖閣諸島問題で各地で反日デモが始まった八月のある日。日本の讃岐うどんの店が、北京の中国外務省の近くにできたと耳にした。

 「食べてみたい」という期待と、「何かトラブルでも」という心配が半々。同僚を連れて訪ねると、堂々と日本語の看板を掲げた店の前には、なんと長蛇の列ができていた。

 物は試しと列に加わると、後ろに並んでいた中国人の女性客が話し掛けてきた。日本に興味を持ち、日本語を習い始めたばかり。職場近くに開店したこの店が気になり立ち寄ったという。

 メディアでは過激な反日が強調されがちだが、日本を多角的に知ろうという中国人は確実に増えている。かつては漫画やアニメがきっかけの人が多かったが、今の理由はさまざま。食もその一つ。彼女は、ある日本の経済人のファンだそうだ。

 「豊かになった中国人は日本を見る目にも余裕ができた」とある中国人作家。日本の現代文化を紹介する雑誌が多くの読者を獲得し「癒やし」「優しさ」といった、日本的な感覚を生活スタイルに取り入れる若者も珍しくない。

 太く腰のあるうどんは日本と同じ味で美味だった。彼女も「初めて食べた。おいしい」とご機嫌。ただ、うどんに中華料理の辛いみそをかけていたのは気になったが…。 (渡部圭)