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長沙 体張る勇気見習って

2012年11月24日

 中国南部長沙の反日デモで襲撃された、日系百貨店の平和堂五一広場店。一階の化粧品・貴金属売り場は、ほとんどのショーウインドーや商品棚が壊され、ガラスを店員が後片付けしていた。

 ところが、ほぼ無傷の状態で残った一角があった。貴金属が入っていたショーケースも暴徒が荒らした形跡は見られない。案内した中国人従業員は「二人の学生が売り場の前に立って守っていたそうです」と説明した。

 今回の反日デモでは各地で日系企業や日本料理店が襲われたが、被害を受けたのは日本人だけではない。平和堂の場合、壊された売り場の八割は中国人が経営するテナントだった。売り場を守ろうとした学生のように、反日の名を借りた破壊行為を批判する中国人は少なくない。

 率直に言って、遊び感覚で大使館に卵や石を投げる行為が目についた半面、理性的な行動は全体の中では一部にとどまったと言わざるを得ない。それだけにあの騒然としたデモの中で体を張って破壊行為を止めるのは、相当な勇気だったと容易に想像できる。

 日本人駐在員からは「過激な話ばかり報道されると日本の嫌中感情が強まる一方だ」と懸念する声も聞かれた。日中双方に求められるのは、学生のような行動とそれを素直に評価する気持ちなのだろう。 (新貝憲弘)