2013年04月17日
国境沿いの平原に1200ものテントがひしめき合っていた。食料や薬は乏しく、汚水が時に、寝床に流れ込むという不衛生な環境。ここで暮らす主婦オモマハムードさん(26)はため息をついた。
「まるで、大きなトイレの中で暮らしているようなもんです」
内戦中のシリア北部バブアッサラマにある難民キャンプ。戦火をくぐり抜けてきた1万人余が暮らす。どの顔も疲れ果てていた。
オモマハムードさんの一家5人は、政府軍の空爆から逃れてきた。体が凍る冬を何とか乗り切ったが、今度は炎熱の日々が来る。
建設作業員アブナブハーンさん(47)の一家11人は、1日4個のパンを分け合う。14歳を筆頭に9人いる子供たちは、いつも腹をすかす。最近は「父さん、家に戻って爆撃で死ぬ方がましだよ」と言うようになった。
難民らは惨状を訴えつつ写真を撮られるのは嫌がる。内戦で政権、反体制派側のどちらが勝つのか見通せず、今はどちらにもにらまれたくないからだ。
子供たちだけは、もの珍しいのか「写真を撮って」と記者の周りに集まってきた。下痢やシラミに苦しむ子が多く、服は汚れている。撮影した画像を「ほら」と見せると、顔がパッとほころんだ。
この子たちから平穏な日々を奪ったのは一体、誰だ。心の中でそう叫んだ。(今村実)