2013年04月17日
トントントン。またか。米ニューヨークの国連本部で約2週間行われた、国際的な取引を初めて規制する武器貿易条約交渉会議の最終日。
議長が厳しい顔で木づちをたたいた。
各国の外交官が議長の周辺に集まり、頭を寄せ合っている。
既に、外は真っ暗。会議場そばの自販機の飲み物はすべて売り切れ、おなかをすかせたある国の外交官は、差し入れのクッキーをかじっていた。
彼らが悩んでいたのは「全会一致(コンセンサス方式)」の定義について。
採択は全会一致が原則だったが、イラン、北朝鮮、シリアが反対を表明した。
これに対し、推進派は、長年の交渉の末、念願の条約が成立寸前だっただけに、無念を隠せなかった。
「たった3カ国でしょ? 全会一致でいいんじゃないですか。コンセンサス方式の定義なんてあるの?」とメキシコ。
コスタリカやチリも「そうだ、そうだ」と言い始め、会場は反対派と推進派が入り乱れて騒然となった。
結局、コンセンサス方式=全会一致という、辞書通りの定義に落ち着いたのは午後10時すぎ。議長がようやく場を締めくくった。
「みなさん、全会一致に至らなかったという結果については、全会一致でいいですね」(長田弘己)