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イラク・ドホーク 迫害 憎悪しか生まず

2015年07月03日

 クルド人少数派のヤジド派の男性(29)は、過激派組織「イスラム国」(IS)に故郷を追われるまで、イラク北部のシンジャール山近くに住んでいた。ISはヤジド派を「邪教」とみて迫害する。妻(25)はシンジャール山近くで拉致され、子どもたちとともにシリアでIS戦闘員の奴隷にされている。

 男性の携帯電話に、妻から連絡が入ったことがある。男性は最近、その時の番号宛てに、いちるの望みをかけて「金はいくらでも払うから、妻を渡してほしい」とメッセージを送ってみた。すると「背教者には売れない」と返信が来た。

 携帯電話でのやりとりから、10歳にも満たない子どもたちがISに「宗教教育」という名の洗脳教育を受けていることが分かった。子どもたちはいずれ、「背教者」の父親を殺すことすらためらわなくなるだろう。

 男性は現在、母親らと一緒にイラク北部のクルド人自治区のドホークに住んでいる。周りには同じような境遇のヤジド派が大勢いる。「もし、ヤツらとどこかで顔を合わせることがあれば、必ず殺してやる」。不穏当だが、家族の苦しみは今日も続いている。 (中村禎一郎)