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イラク・キルクーク 異教徒の安住の地は

2017年11月27日

 イラク北部クルド人自治区の分離独立を問う住民投票の取材のため、9月下旬に油田都市キルクークを訪れた。街で入ったレストランで接客係に付いたのは、イラクでは珍しいキリスト教徒のシラッド君(17)だった。

 話を聞けば、彼は過激派組織「イスラム国」(IS)が最大拠点としたモスル出身。2014年6月にISによる支配が始まると、イスラム教以外を異教徒とみなして迫害するISを恐れ、一家7人で避難。1カ月3万5000ディナール(3300円)のアルバイトで家計を助ける。

 今年7月にモスルは解放されたが、ほとんどのキリスト教徒はいまだ避難したまま。シラッド君も「恐ろしい記憶があるモスルにはもう戻りたくない」。だが、クルド人、アラブ人、トルクメン人が混在し、民族間で緊張の高まるキルクークでも、少数派として身を隠すように暮らす立場に変わりはない。

 夢は3人の兄姉が難民として暮らすスウェーデンへの移住。欧州が難民受け入れを厳格化しているのも分かっている。それでも「ここでの生活に比べれば、どんなつらいことにも耐えられる」。安住の地はみつけられるだろうか。 (奥田哲平)