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バルセロナ 闘牛禁止めぐる因縁

2015年11月11日

 円筒形の巨大なショッピングモールに足を運んだ。夜はライトアップされ、内部には服飾店やレストランが軒を連ねる。聞けば、一九七〇年代まで闘牛場だった建物を外側だけ残して改装したのだという。

 スペインといえば「闘牛の国」だが、バルセロナでは見ることができない。二〇一一年に別の闘牛場で行われた興行を最後に姿を消した。その前年にカタルーニャ州議会で闘牛を禁止する法律が成立したためだ。

 なぜ、そのような法案が通ったのか。動物愛護意識の高まりが発端だったが、それに独立を求める勢力が呼応した。闘牛文化は「スペイン的だ」と。

 その「中央」への反感の根源はカタルーニャが抱える苦難の歴史にある。三百年前、スペインに滅ぼされて「国」を失い、フランコ独裁時代、自分たちの言語を奪われた。闘牛禁止は両者の因縁の果てだった。

 九月下旬に行われたカタルーニャ州議会選で独立派が過半数を握った。今後、独立に向けた手続きを進めるという。中央政府はそれを認めない姿勢で対立は続く。そのほぐし難き感情に、両者が紡いできた歴史の根深さを思う。 (渡辺泰之)