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中国・瀋陽 消えた北朝鮮の薫り

2016年01月04日

 かつて中国東北部の遼寧省瀋陽に足を運んだ折、頻繁に利用したホテルがある。北朝鮮と関係が深く、従業員のほとんどは北朝鮮から派遣された人々。朝食会場に行けば、北朝鮮の貿易関係者があふれており、彼らが朝鮮語で話し合う内容に耳を傾けながら、朝鮮料理に舌鼓を打ったものだった。

 約5年ぶりに宿泊した。以前と比べものにならないほど、洗練され立派な施設に様変わりしていた。ホテルの紹介文によると、2011年に中国企業の手に渡り、改装工事を経て12年5月に新装オープンした。

 朝鮮の民族衣装チマ・チョゴリを着た北朝鮮の女性がフロント業務に従事し、部屋で朝鮮中央テレビを視聴可能なのは、往年と同じだった。当地の事情通によると、瀋陽駐在の北朝鮮総領事もホテル幹部に名を連ねているという。

 フロントの従業員は「北朝鮮のお客は今も多い」と話していたが、それらしい宿泊客に出会うことはなく、中国語が飛び交っていた。朝食には中華料理が並び、朝鮮料理はすっかり姿を消していた。中国資本にのみ込まれ、異国情緒が消えたのはとても残念だ。 (城内康伸)