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パリ 母の背中 追いかけて

2016年03月25日

 「人の笑顔を見るのが大好き」。目の前の黒人青年が真っすぐな視線を向けてきた。路上で生活する人らに食料や衣類などを配るボランティアをするアメッドさん(24)。賛同した人からの寄付が原資だ。

 アフリカ系移民の家庭に育ったアメッドさんがこの活動を始めた原点は母だ。路上で恵まれない人を見ると、無理をしてでも施しを与える母だった。そして幼いアメッドさんに人を助ける尊さを説いたという。

 そんな姿を見て育ち「いつか社会に貢献できる活動をする」と心に決めていた。19歳の時、突然、いとこが亡くなった。「人生は一度きり。待っていてはいけない」。一念発起し、慈善団体を立ち上げた。

 華やかなパリ。不況の影響などで路上生活を強いられ、食事にも困る人が多いのも花の都の現実だ。アメッドさんが支援するのは、そんな社会からこぼれ落ちそうになっている人たち。「サンドイッチを笑って食べてくれる。それを見た日は自分の食事もおいしくなるんです」

 昨年、暗いニュースが続いたフランス。だが、ひたむきな青年の目に明日への希望を見る気がした。 (渡辺泰之)