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パリ 異国で描く難民の夢

2015年10月06日

 「パリで家族を持ちたい。それが夢」。スーダン人のイブラヒムさん(22)は私を見つめた。難民の増加が問題化するパリ。元ホテルを活用した緊急避難施設を取材した。

 政情不安が続く祖国。父が紛争で死亡するなど、身の危険を感じ、イブラヒムさんが出国したのは2011年5月。渡航費用を稼ぐためリビアで2年間働き、6万2000円相当を仲介者に支払い、地中海を渡った。680人がひしめきあう船。「生きるか死ぬか。恐ろしかった」と振り返る。

 イタリア経由でフランスにやってきたのは昨年末。施設では食事にありつける。命を狙われる恐怖もなく、安心してベッドに身をうずめられる。「今は100パーセント幸せ」。かみしめるように語った。

 イブラヒムさんは近くフランスで難民申請をするという。支援団体の助けで、すでに仏語も学び始めた。「ここで仕事を見つけ、生きていく」という決意の表れだ。

 欧州各国は今、紛争などで故郷を追われた大量の難民の流入に苦しむ。異国に未来を託した青年には、抱いた「夢」をかなえてほしい。(渡辺泰之)