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米オーランド 破られた紙と心の傷

2016年08月07日

 曇り空の湿気のある生暖かい空気の中、人々は唇をかみ、険しい表情を浮かべていた。6月12日に史上最悪の銃乱射事件が起きた米フロリダ州オーランド。事件現場のナイトクラブはずいぶんと手前から規制線が張られていた。

 現場に花を手向けようとする人々も、黄色いテープの前で立ち尽くすしかない。遠くを見つめる女性に話を聞いた。「信じられない。平和な街なのに・・・」。涙し声を震わせながら、事件への憤りと悲しみをとつとつと語ってくれた。

 話を聞いた最後に、記事に必要な名前と年齢を聞いた。しばし無言の後、女性は取材メモをみせてほしいと言った。差し出すと「気が変わった」と言い、メモが書かれたページをびりびりと破り始めた。

 「何するんですか」。大声を出す私に目もくれず、女性は紙を破り続けた。淡々とした表情で。底のない悲しみと怒りに触れてしまったのだと思う。「分かりました」。そう言うのが精いっぱいだった。

 惨劇を防ぐ手だては? 心の傷をどう癒やす? 答えを求めるように、次の取材先へ向かうしかなかった。 (石川智規)

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