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志国高知 幕末維新博

志国高知 幕末維新博 高知県 龍馬の時代に思いはせ

坂本龍馬記念館本館前には握手をもとめる龍馬像が立つ

坂本龍馬記念館本館前には握手をもとめる龍馬像が立つ

 「月の名所は桂浜」などとよさこい節にもうたわれる白砂青松の桂浜。その先に広がる雄渾(ゆうこん)な太平洋を見渡すように、精悍(せいかん)な表情の坂本龍馬像(高さ5.3メートル、台座を含め13.5メートル)が立っていた。

 龍馬と、自由民権運動の主導者・板垣退助、三菱財閥の創設者・岩崎弥太郎。銅像を尻目に、3人をデザインした幟(のぼり)が翻る坂道を上ること約10分、今回の訪問の目玉である坂本龍馬記念館に到着した。

 明治維新150年を迎え、高知県では、歴史を中心とした博覧会「志国高知 幕末維新博」が県内各地で開催されており、その中核施設となるのがこの記念館なのである。

 土佐藩が大きく関わった「大政奉還」から150年の節目に開かれた第一幕に続き、「明治維新」から150年の第2幕が4月21日にスタート。これに合わせてリニューアルオープンした本館は、龍馬の生涯をたどる体験型の展示が続き、薩長同盟までの経緯を学ぶアニメを上映しているほか、暗殺された京都の「近江屋」の一室を復元してもいる。天井の低い半ば屋根裏のような部屋だ。龍馬が生きてさらに働いていれば、何をしでかしてくれたのか。つい思いをめぐらせてしまう。

龍馬が暗殺された近江屋の一室が復元されている=坂本龍馬記念館本館で

龍馬が暗殺された近江屋の一室が復元されている=坂本龍馬記念館本館で

 同時にオープンした新館では、龍馬直筆の手紙、龍馬が高杉晋作からもらったピストルと同型の実物のほか、刺客に襲われた際、敵の刃(やいば)を鞘(さや)ごと受けた二尺二寸の「陸奥守吉行」と同じ作者の刀など、龍馬を中心とした土佐の動向が分かる史・資料をそろえる。ジョン万次郎展示室も併設している。

 この記念館は、戦国時代に長宗我部氏が居城とした浦戸城跡に立っている。しかし、関ケ原の戦い(1600年)で石田三成方の西軍に属していた長宗我部盛親が土佐を去り、山内一豊が入ってくると、浦戸城はしばらくして廃城となり、長宗我部氏の家臣は山内氏の下級武士「郷士」となる者が多かった。龍馬は富商だった高祖父が郷士株を取得し、長男に分家させた町人郷士の出身だ。

 「幕末に活躍した志士の多くが、郷士の身分だった。長宗我部氏は明治維新の原動力の土台になったといえる」。現代龍馬学会理事の小島博明(おじまひろあき)さん(74)はこう話す。その意味でも、記念館が浦戸城跡にあるのは縁を感じさせるのだ。

船上から浦戸城跡と桂浜を望む。坂本龍馬記念館は国民宿舎の建物の後ろに隠れている。右手の丘には龍馬像が太平洋を向いて立っている=桂浜沖から(いずれも高知市で)

船上から浦戸城跡と桂浜を望む。坂本龍馬記念館は国民宿舎の建物の後ろに隠れている。右手の丘には龍馬像が太平洋を向いて立っている=桂浜沖から(いずれも高知市で)

 記念館訪問の翌日、船で土佐湾に乗りだし、沖から城跡を望む機会があった。かつては3層の天守がそびえ、本丸や櫓(やぐら)が築かれていたのだろう。だが、長宗我部氏をしのぶ人は地元でもそう多くはないと聞いた。

 小島さんは「長宗我部家が支配した時代や浦戸城跡の貴重さなど、高知の人たちはあまり関心を示さない傾向がある。知っておいてほしいことなんですが」と語る。

 龍馬とともに襲われた中岡慎太郎、大政奉還建白の中心人物・後藤象二郎、西郷軍から熊本城を死守した軍人でのち「日本主義」を提唱した貴族院議員・谷干城(たてき)-。幕末に活躍したばかりか、その後の新国家の在り方にも大きく関与した人物はめじろ押しだ。

 長宗我部氏という基層に山内氏の支配が重なり、「幕末に鬱屈(うっくつ)していた力を爆発させた」(小島さん)という土佐人。

 同館をはじめ、県内に点在する数多くの歴史館や資料館で展開されている高知の幕末維新博は、こうした人物の実像を知るのにかっこうの機会を提供している。

 文・写真 小鷲正勝

(2018年5月25日 夕刊)

メモ

地図

◆交通
高知龍馬空港へは羽田から約1時間20分、愛知県営名古屋空港から約1時間。
空港から坂本龍馬記念館へは空港連絡バスでJR高知駅へ。
同駅から桂浜行きとさでん交通バスまたはMY遊バスで「龍馬記念館前」下車。

◆問い合わせ
高知県観光振興部=電088(823)9606

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★高知市立自由民権記念館
日本で最初の民主主義運動を展開した土佐。
板垣退助をはじめ数々の結社の活動を展示。
「東洋大日本国国憲案」を起草し、死刑制度の廃止や革命を起こす権利などを明記した植木枝盛の書斎も館内に移築されている。
幕末維新博期間中には「坂本直寛-龍馬の遺志を継ぐもの-展」(9月24日まで)などを開催。
電088(831)3336

★高知城歴史博物館
6万7000点に及ぶ山内家伝来の歴史資料や美術工芸品を中心に土佐藩・高知県ゆかりの資料を収蔵・展示。
幕末維新博に合わせ、戊辰(ぼしん)戦争に関わる展示もある。
電088(871)1600

★ひろめ市場
鮮魚店や郷土料理店、お土産店など60以上の店舗がひしめく屋台村。
地元民と観光客が入り交じって飲食している。
カツオのたたきやウツボの唐揚げは土佐名物。
電088(822)5287

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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