2009年10月31日
「危ない!」と思わず叫んだ。ロシア南部・北オセチア共和国の首都ウラジカフカス。近郊の道路をタクシーで行くと、カーブを曲がった先に十数頭の牛が横たわってふさいでいる。急ブレーキで難を逃れたが、その後も行く先々で牛が道路を占拠。しかも、どの車もクラクションすら鳴らさず牛に気を使うように避けて通り過ぎる。
牛を大事にする土地かと思ったら、運転手が笑い飛ばした。「何をやっても無駄だからさ。絶対に動かない。やつらは知っているんだ。ここが一番快適で安全だと」
牧草地にいると虫が群がりうるさいが、車が走る路上は虫が少ない。車も避けてくれる。「だから満腹になるとすぐにこうするのさ」と運転手。
慣れているのか、あきらめなのか、どの車も通れなければ牛が動くまで平然と待つ。いら立つのは日本人の記者ばかり。ロシアの田舎と牛にしてやられた。 (中島健二)