2012年04月30日
幸運は思いがけず、それも2晩連続でやってきた。タイ北部パヤオ県のラオス国境沿いに広がる山岳地帯。少数民族モン族の村を取材で訪ねると、村人らがちょうど山で捕獲したイノシシを解体していた。体重約80キロの大物は久しぶりだといい、肉は子だくさんの各家にも配られた。
夜、村長らの招きでイノシシ鍋をごちそうになった。香草と一緒に煮たシンプルな作りだが肉は思ったよりもずっと柔らかくうまかった。泡盛がふるまわれ、心のこもったもてなしに酔いしれた。
翌日は別の村で、モン族の中・高生が暮らす寮に泊まった。夕食のおかずは寮の池にいる魚。生徒らがじゃぶじゃぶと池に入って網で捕まえていると、体長60センチほどの大きなナマズがかかった。
「ナマズは大抵もっと小さい。あなたはラッキーだよ」と寮職員のガランさん(40)。前夜のイノシシ鍋のことを話すと、運のよさに驚き笑いだした。炭火で焼いたナマズの白身の味は絶品だった。
寮では生徒らが豚や鳥、米、野菜も育てている。肉はめったに食べられず、祝い事の時だけ自分たちで解体して調理し、一部は市場で売って他の食料品や文房具に換える。「だからみんな生きものにすごく感謝している」とガランさん。自然の恵みはきっと子どもたちを大きく成長させるだろう。 (杉谷剛)