2014年06月17日
日中戦争時に日本で過酷な労働を強いられたとして元中国人労働者や遺族らが、日本企業に損害賠償を求め中国の裁判所に提訴する動きが相次いでいる。
このうち河北省石家荘市の裁判所に提訴された案件では、日本メディアの記者が駆け付け、原告団の代表が訴状を提出する様子を取材した。裁判所は日本メディアを応接室に入れて原告団への取材を認めるなど異例の対応を取り、強制連行問題を大きく取り上げてもらおうという当局の意向が透けて見えた。
そうした中、数人の中国人が取材団に近づき「私たちの訴えも取り上げて」と話し掛けてきた。息子が無実の罪で殺されたと主張する女性や賃金未払いを訴える男性など陳情者と呼ばれる人たちだ。しかし記者たちにすがりつこうとする陳情者を、裁判所関係者とみられる男性は「日本メディアは強制労働裁判の取材に来ているんだ。あっち行け」と追い払った。
陳情者の訴え一つ一つに応えることは難しい。ただ誰にも相手にされず裁判所の外に取り残された陳情者たちの寂しげな様子は、中国の厳しい現実を象徴しているようで、しばらく頭から離れなかった。 (新貝憲弘)