2017年02月10日
朝、パリジャン紙の見出しに目を疑った。「伝説のレストラン、ル・ドームが消失の危機?」-。
「ル・ドーム」はかつて芸術家らが集ったパリ市南部のモンパルナス地区にある有名店。1897年創立のこの店には、詩人アポリネールやピカソ、サルトル、ボーボワールらが足しげく通ったことで知られる。
同紙によると、ル・ドームは経営難で破産を申し立て、会社更生法の適用を受けた。相次いだテロで観光客が減少したことも大きいという。店は経営を続けながら再建を目指すと知り、胸をなで下ろした。
この界隈(かいわい)には老舗のカフェやレストランが点在。「厳しい状況はどこも同じ」と記事は伝えており、先行きが心配になる。
数年ぶりにル・ドームを訪れ、アールデコ調の店内ではなく、気軽に入れるテラスに腰を下ろした。周りでは老夫婦やマダムがおしゃべりに夢中になっていた。本を読みながらゆっくり午後を過ごす紳士もいた。
パリは人との距離感が近い街。その「社交場」でもある、個性的なカフェやレストランが消え、巨大飲食チェーンには代わってほしくない。そう強く願った。 (渡辺泰之)