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パリ 意地悪をされても…

2019年09月09日

 パリにはプライドが高い人が多い。あるレストランでは、なかなか注文を聞いてくれず、カウンターに行き、英語で注文したいと伝えると、白人の中年男性がフランス語で何やらまくしたてる。「フランス語は分からない」と言うと、いら立ったように、英語で「あそこの同僚に聞いて」と言われた。

 空港でも、おしゃれにスーツを着こなした黒人男性に、フランス語で、おそらく道を聞かれた。「ソーリー」と言うと、男性はそっぽを向き「ふー」とあきれた顔をして、黙って立ち去った。ぽつんと残された私。フランス語ができないのは「人でなし」のような気分になる。

 普段、勤務するロンドンより街は汚く、時には道の真ん中に何かのふんが落ちている。一体、何が彼らの自信の源なのか。神髄を知るべく、「ムーランルージュ」の舞台に出かけた。

 「これぞパリ」だった。あんなに美しく堂々としたトップレスの女性たちの見事な舞台は、世界でもそうは見られないだろう。ちっともいやらしさがない。芸術性の高さもさることながら、どこか退廃的雰囲気の漂うパリ。だから、意地悪されても嫌いになれない。 (沢田千秋)