2008年11月07日
先日、モスクワ市内の大型書店に出掛けたときのこと。
「日本の本はどこにありますか」。若い女性の店員に尋ねると「ハルキ・ムラカミを探しているのか。私も彼の作品が好きだ」と返ってきた。
ハルキ・ムラカミとはもちろん、作家の村上春樹氏のことである。ロシアでは1990年代後半に翻訳出版が始まり、あっという間に人気作家の仲間入りを果たした。大抵の本屋には専門コーナーがあるし、新刊は必ず平積みされる。今やロシアで最も有名な日本人といっても過言ではない。
人気の秘密は定かでないが、店員の女性いわく「ハルキの作品には東洋の心がある」という。「確かに」とうなずいた後で「彼の作品には東洋の心と、西洋のファンタジーが共存している」ともっともらしく解説した。
「へえー」と感心する彼女。本当は探したかったのは日本の「マンガ」だったのだが、それ以上、尋ねるのはやめておいた。
(酒井和人)