2009年03月20日
北京の薄暗い路地裏に、中国伝統の影絵芝居「皮影」を演じる小劇場がある。孫悟空や妖怪の人形が生きているかのように舞う「西遊記」を見終わると、芸人らが舞台裏に招き入れてくれた。
小さな小屋にロバ皮で作ったカラフルな人形が並ぶ。酒とたばこのにおいが充満している。人形遣いは初老の男性たった二人。芸術家というより、農民に見える風ぼうだ。
「皮影を見る人は減ったから、生活は苦しいよ」と張さんはたばこを吹かす。固定の劇場はなく、地方巡りの生活。農村で開発を行う有力者が、村人を集めて買収するために見せる影絵を演じるのが大きな収入源だ。
「国家が守るべき文化遺産なのに、誰も関心がない」と張さん。「若者が時間と金をかけて皮影を学んでも、ろくに稼げない。私たちの世代がいなくなったら、皮影は滅びてしまうだろう」。2000年近い歴史を持つ皮影にも後継者難の危機が押し寄せている。
(鈴木孝昌)