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北京 五輪マスコットの今

2022年12月22日

 「ビンドゥンドゥン! ビンドゥンドゥン!」。若者が集う北京・三里屯(さんりとん)を歩いていると、懐かしい名前が聞こえてきた。

 スマートフォンのアプリを手掛ける企業の街角キャンペーンで、ダウンロードした人に北京冬季五輪大会のマスコット「氷墩墩(ビンドゥンドゥン)」の人形を無料で配るという。人形で満杯の段ボールが路上にたくさん置かれ、アルバイトの男性も「今は誰も買わないから」と苦笑い。家族に「いらない」と言われながらも、アプリを取得して1つもらって帰った。

 思い返せば、大会中に人気が爆発し、公式グッズショップは常に長蛇の列。通販アプリでも品切れが続き、中古品の価格が高騰した。あれから半年。増産された商品が予約購入した人の手元に届くにつれ、北京では話題に上らなくなった。北京の道端で、「本物のビンドゥンドゥン、1個10元(約200円)だよ」などと、人形がたたき売りされているのも見かけた。

 わが家にも、北京五輪の時に同僚や友人が苦労して入手してくれた人形が、いくつか並んでいる。自信満々なはずのパンダの表情が、時に悲しげに見えることがある。 (白山泉)