2010年02月10日
音楽は、かしこまって聴くものではないと思っている。「大道芸人」のように、路上や地下鉄駅で演奏している奏者から、自分の琴線に触れる音楽を見つけるのも楽しみだ。
東京都が新進のアーティストに公共施設を開放する事業を始めたとき、モデルにしたというニューヨークの地下鉄駅で、先日、感心する奏者に出会った。
ジュリアード音楽院の前の66丁目駅。近くでムーティ氏が指揮するニューヨーク・フィルを聴いた帰り、まさに同じベートーベンの交響曲第3番を、全パートを1人で受け持つかのようにサクソホン奏者が吹いていた。無論、演奏会帰りの聴衆を狙い、その日の曲目を調べた上でのことだ。
日本の能楽は、鼓や地謡(じうたい)などわずか11、2人で、能楽堂の響きを利用しながら西洋のオーケストラ数十人と同じようなダイナミックな音楽を紡ぎ出すが、地下の反響を生かしながらの見事なソロには脱帽した。 (嶋田昭浩)