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カイロ わが身省みるカフェ

2011年10月29日

 「エジプシャン(エジプト人の)カフェに行ってみる?」。先日の夜、カイロ支局で原稿を書き終えると、助手が誘ってきた。

 エジプシャンカフェと聞き、古代エジプト王国をモチーフにした内装をイメージし、期待が膨らんだ。

 住宅地近くの商店街を歩いていると、「ここ」と言われた。そこは歩行者天国になった道路の上。テーブルと机だけが置かれたオープンカフェだった。

 期待通りとはいかなかったが、イスラム国家なので、まずはソフトドリンクで乾杯。友人と談笑する若者や、一人で水たばこをくゆらせる中高年ら十数人がおり、思い思いの時間を過ごしていた。

 自宅で家族と一緒に夕食を食べてから、カフェに来るのがスタイルという。大声で話す人はなく、瞳を閉じている人も。会話が途切れると夜空を見上げる人もいる。静かな時間が流れていた。

 昼間の市街は喧噪(けんそう)に包まれ、渋滞や割り込みに対するクラクションが鳴り響く。助手は「昼間に力を入れすぎるから、夜はカフェで気持ちを落ち着けるんだよ」と目を細めた。

 自分はというと、正直、落ち着かなかった。アルコールなしに何時間もとりとめのない話をする経験がなかった。健康診断の結果も気になる。エジプシャンスタイルをまねてみようかな、ふとそう思った。 (寺岡秀樹)