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ロンドン 厄介な名前を逆手に

2012年03月28日

 以前この欄で、記者を「『ノブ』と呼んで」と頼んでも、英語では俗語で「おちんちん」を意味するため、奇妙な顔をされてしまうとの経験を書いた。

 今回はその続編。ロンドンの支局で、自分宛てのファクスのボタンに「AN」とあるのに気がついた。助手が日本式に姓、名の順で頭文字を記入してくれたのだと分かったけれど、他の記者のものを見ると、英国式になっている。

 それで、理由を尋ねると「NA」は「NOT APPLICABLE」の略で「該当なし」とか「不適切」という意味になるという。否定的であまりよくないから、あえて「AN」にしたそうだ。

 まったく、頭文字もふさわしくないとは、踏んだり蹴ったりだと嘆いていたら、思わぬ収穫があった。たまに飲みに行く自宅のお隣さんはブラジル出身の陽気な六十代のおじさん。彼からのメールの書き出しは、こうだった。

 「ハロー ボブヒコ!」

 きっと記者の発音が悪くてそう聞こえたのだろうが、「おれの名前はノブヒコだ」と最初、腹が立った。でも、そのうち、このあり得ない名前に笑いが湧いてきた。しばらく、腹を抱えると、今度はひらめいた。「そうだ。愛称はボビーでいこう」。少なくとも「ノビー」より語感はいいはずだ。 (有賀信彦)