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ベルギー・リエージュ 頑固おやじの解任劇

2018年06月22日

 日常、なかなか見かけないような風変わりで、おもしろい人物を目の当たりにした。サッカー日本代表のハリルホジッチ前監督だ。ベルギーで行われた日本代表の欧州遠征を取材して、初めて彼の言動を見聞きした。

 振り返れば、この遠征が衝撃的な解任劇の引き金だった。選手と監督の意識の乖離(かいり)は素人目にも明らかで、ある選手は「何を言っても聞いてくれない」と告白した。こわもての監督に、選手が縮こまっているようにも見えた。

 会見では歯に衣(きぬ)着せずまくしたてた。「幻想的な夢は抱かない」。強豪でない日本がボールを保持して仕掛けるばかりの「強者のサッカー」を目指すのは危ういという警句だ。一方で唐突に「銀座でパレードをするのが夢」と晴れやかなイベントを希望する。

 フランスで得点王や年間最優秀監督に輝く一方、メディアとの衝突も多く、監督解任を幾度も経験。母国ボスニア・ヘルツェゴビナでは内戦をくぐり抜けた。栄光と挫折から導き出された頑固さは、周囲に理解されづらいだろうが、安易に妥協しない強さの裏返し。懸けてみてもいいと思ったが。 (垣見洋樹)