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ベルリン 壁の跡に穏やかな春

2019年07月02日

 時計を1時間進める夏時間になり、ベルリンでも厚手の上着を着る日はなくなった。ようやく「春本番」。ということでサクラを求めて散歩に出掛けた。

 自宅から歩いて1時間弱の所にあるボルンホルマー通りのベーゼ橋。橋の下に桜並木が見えた。ところが下りてみると、ソメイヨシノは満開のピークを少し過ぎた感じ。ヤエザクラはまだつぼみだった。

 東西ドイツが分断されていた時代、橋のたもとには検問所があった。ベルリンの壁が崩壊に至った夜、押し寄せた約2万人の東独市民に抗しきれず、最初にゲートが開放された場所。跡地は「1989年11月9日広場」と名付けられている。

 サクラは壁崩壊後まもなく、日本のテレビ局の呼び掛けで集まった視聴者からの寄付でベルリン各所の壁跡地に植えられた。その数、9000本以上に上る。

 ベーゼ橋での花見は少しタイミングが悪かったが、写真を撮ったり、犬を散歩させたり、多くの人たちが思い思いに楽しんでいた。壁崩壊から今年で30年。年を重ねるごとに花の数を増やしていったサクラの下で、かけがえのない穏やかな時間が流れていた。 (近藤晶)