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イスタンブール 記者解放、訴え続ける

2019年10月09日

 5カ月ぶりに会った彼女は、勢いよく刑務所生活の出来事を語り始めた。トルコでの取材時にリサーチなどを手伝ってくれていた記者アイシャ・ドゥズカンさん(59)。1月下旬の収監を本紙「核心」で紹介した。刑期は禁錮1年6月だったが、6月下旬に仮釈放が認められた。

 エルドアン政権下でメディア規制が強まるトルコでは、多くの記者が拘束されている。ドゥズカンさんは、政権が敵視する少数民族クルド人の問題を巡って「テロ組織の情報宣伝に加担した」罪で摘発された。収監中、クルド系組織から離脱するとの誓約を求められたが、「メンバーではない」と拒否した。

 ドゥズカンさんによれば、なりふり構わぬ言論弾圧は記者以外にも及ぶ。対面の独房にいた女性は一般の主婦。「ツイッターで反政府的意見を投稿したのがプロパガンダとされた。フォロワーは5人だけなのに」

 ドゥズカンさんは収監中も記事を書いていた。手紙は到着に時間がかかるため、小さく丸めた原稿を靴下に隠し、弁護士の面会時に渡したという。「刑務所内にはまだ多くの仲間が残されている」。解放を訴える執筆を続けていく。 (奥田哲平)