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英ウィンブルドン 伝統と「格差」を備えた

2019年10月10日

 テニスのウィンブルドン選手権の会場近くで「テニスを見に行くのか」と話し掛けられた。見るからに仕立てのいいジャケットを着た男性。「取材に来た」と答えると、男性は「連れがドバイから来る予定だが、飛行機が遅れて間に合わない。一緒に観戦しよう」と言う。

 男性は、センターコートでの観戦や専用ラウンジが利用できる、1人10万円以上の「ディベンチャーチケット」を所持。錦織圭選手の試合開始まで物見遊山のつもりで、ラウンジでのお茶と試合観戦に付き合った。

 男性はロンドンで20年間働き、今はドバイで暮らす。世界各地に不動産やホテルを所有。週2回はゴルフ、テニス、ヨガに励むという。愛車のフェラーリの写真を何枚も見せられた。

 ウィンブルドンのチケットは入手困難だ。事前の抽選に当たらなかった人が当日券を求め、連日、徹夜で長蛇の列を作る。他方、ディベンチャーは唯一、転売と前売りが可能。金さえあれば確実に観戦できるのだ。

 センターコートでは、正装した人々に囲まれ居心地が悪かった。試合後、男性のディナーの誘いを断り、一般客に交じって駅まで歩いた。 (沢田千秋)