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ロンドン 自由訴えの向く先は

2019年10月31日

 報道の自由を守る国際会議。主導した英国のハント前外相は「闇の力を監視できる力は報道をおいて他にない。報道の自由は民主主義の根幹だ」と、世界中の記者殺害事件の抑止を訴えた。それでも、なぜ英政府が報道の自由の保護にこれほど熱心なのか、ふに落ちなかった。国際人権弁護士アマル・クルーニー氏の言葉を聞くまでは。
 「世界一強力な民主主義国の首脳によって、世界の報道自由の減退が進んでいる。他の国々のリーダーシップがなければ状況は変えられない」。会議は、トランプ米大統領への包囲網の意味もあったのだ。欧州連合(EU)離脱で混乱する英国が、この機会に、われこそ真の民主主義国とばかりに存在感を誇示する狙いが透けた。
 知性と美を兼ね備え、世界的に有名なクルーニー氏。会議から数日後、フィリピンの記者が投獄の危機にあり、弁護の先頭に立ったと報じられた。実際の取り組みは始まっている。
 大国のパワーゲームに報道の自由が利用されているかもしれない。それでも、トランプ氏の言動が結果的に記者を守る意識の向上につながるなら、皮肉ながら期待しよう。 (沢田千秋)