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ベルリン メルケル演説に共感

2020年07月18日

 ドイツのメルケル首相が先月行った新型コロナウイルスに関するテレビ演説が、印象深かった。特定のテーマでテレビ演説するのは異例のことだった。

 「開かれた民主主義では政治的な決定は透明性を持ち、説明されなければならない」。メルケル氏はまず、危機対応における政府の姿勢を強調。感染拡大を抑えるため、人との接触を極力減らす必要があると説いた。

 国民に不自由な生活を強いる制限は「旅行や移動の自由を苦労して勝ち取った私のような人間にとって、絶対に必要な場合にしか正当化されない」と、東ドイツで育った自身の経験を引き合いに理解を求めた。

 ウイルスと闘う医療従事者や日常生活を支えるスーパー従業員らへの感謝の言葉もあった。「苦難の時にこそ互いにそばにいたいものだが、今は反対のことをしなければならない」。演説からは国民に寄り添う姿勢が強く感じられた。

 新型ウイルスの感染者が多い国の中で、ドイツの致死率は低く抑えられている。大量の検査や医療体制など、さまざまな要因があるが、国のトップが発する言葉の説得力も、その一つではないかと思う。 (近藤晶)