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ニューヨーク 自由の女神も泣いて…

2019年12月17日

 「それは自由の女神が言っていることと違う」。日系二世で太平洋戦争中に人種差別を経験したノーマン・ミネタ元運輸長官に取材中、トランプ米大統領が民主党の移民系の女性下院議員らに「米国が嫌なら国に帰ればいい」と言い放ったことについて聞くと、こう語気を強めた。それが心に残り、ニューヨークの自由の女神像を訪ねた。

 女神像の台座の内部には、19世紀末、米国の詩人エマ・ラザラスが台座の建設資金を集めるために詠んだ詩を刻んだ銅版が飾られている。「疲れ、貧しい、抑圧からの解放を求めて身を寄せ合う民衆をわれに与えよ」。以来、女神像は移民国家の象徴として、新たな生活を求めて米国に渡る人々に勇気を与えてきた。「私が大統領から『帰れ』と言われたら、(故郷の)サンノゼ(カリフォルニア州)に帰るよ」。ミネタ氏の皮肉からは怒りが伝わってきた。

 ところがトランプ政権のある高官は最近、「疲れ、貧しい民衆」について「自立でき、生活保護を受けない者」という原文には一切ない新解釈をメディアで堂々と披露し、批判を浴びた。排外的な政権は歴史も歪曲(わいきょく)しようとしている。 (岩田仲弘)