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英スターリング 「自由の剣」は何思う

2020年04月17日

 「幅が狭い橋を渡る時を襲ってイングランドの大軍に勝ったんだ。彼は戦いがうまかった」

 かつてのスコットランド王国の首都だった英北部スターリング。タクシー運転手の男性は、約700年前にこの街であった戦闘を語り始め、当時の戦士ウィリアム・ウォレスを称賛した。独立を守ったスコットランドの英雄で、1996年にアカデミー賞を5部門で受賞した米映画「ブレイブハート」で主人公として描かれた。

 案内されたのは高さ67メートルのウォレスの記念塔。街を睥睨(へいげい)する塔には、ウォレスが使った長さ約1.7メートルの剣が展示されていた。「自由の剣」とも呼ばれ、地元の民族主義者に盗まれた過去もあるという。

 英与党・保守党が欧州連合(EU)離脱を公約にした総選挙を契機に、残留派が圧倒的なスコットランドでは独立機運が高まる。選挙前の街の取材でも独立を掲げる地域政党支持の声がほとんどだったが、返答拒否の多さが気になった。思案の後、保守党支持と語った女性は「私は独立に反対だから」。

 返答拒否の多さは街の分断を表していたのだろうか。 (藤沢有哉)