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英ロンドンデリー ここも置き去りの地

2020年05月01日

 きっかけは、ある大学教授の「事件直後、警察にはしゃべるなという張り紙があった」というセリフだった。英領北アイルランドのロンドンデリーで起きた記者殺害事件で話を聞いた時、教えられた。以来数カ月、かの地は一体どのような状況なのか、ずっと気になっていた。

 首府ベルファストの空港でレンタカーを借り、3日間で約500キロを運転した。国境ののどかな丘陵地帯で、北アイルランド紛争の話をしてくれた牧場主は「ここでもたくさんの人が死んだことを英国人すら知らない」とつぶやいた。殺害された記者の友人は「日本人にも、彼女の前向きな思いを知ってもらいたくて取材に応じた」と言った。

 殺害現場は、警察が公開した暴動や銃撃犯の映像がウソのように静かで人通りも皆無。ただ、警察とメディアを拒む住民の鋭い視線を、住宅内や過ぎ去る車内から痛いほど感じた。

 北アイルランドは、かつて何度も取材した沖縄を彷彿(ほうふつ)とさせた。人々はおおらかで親切。だが、中央から置き去りにされた疎外感が不穏な空気を醸成している。欧州連合(EU)離脱後も、彼らの平穏が続くことを願ってやまない。 (沢田千秋)

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