2021年05月11日
出勤途中、シャンゼリゼ通りにあるパリ支局の近くからノリのいい音楽が聞こえてきた。近づいてみると、有名なピザ店の前に労働組合の旗を持った人が集まり、曲に合わせて踊りながら掛け声を上げている。にぎやかな抗議活動の手法に感心しながらも参加者の1人にわけを聞くと、「店がなくなるんだ。何十人もの従業員が職を失ってしまう」と怒り顔だった。
半世紀前の開店以来、常に世界中の観光客でにぎわってきたという同店。政府の新型コロナウイルス感染対策で他のレストランと同様に昨秋から休業を続けていたが、再開せず閉店する道を選んだようだ。
「世界一美しい通り」に構える各店は、「黄色いベスト運動」のデモ隊に紛れた暴徒の破壊活動で疲弊していたところ、コロナ禍に追い打ちを掛けられた。商店街組合の調べでは、昨冬の段階でショーウインドーの15%が空いたまま。従来は考えられなかった事態だという。
支局が入居する建物に着き、配達された各紙の朝刊を預かってくれている管理人にピザ店の閉鎖を告げると、「え、あの店もか」と言って「うーん」とうなってしまった。 (谷悠己)