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米フィラデルフィア ごみ拾いに根付く愛

2021年11月05日

 米東部の大都市フィラデルフィアを歩くと、ウィリアム・ペンの銅像をよく見かける。街の基礎を築いた英植民地時代の総督で、自由や公正の価値を擁護したことで敬愛されている。

 その街で、路上の清掃を通じて地域の再生を目指すNPO代表の黒人男性テレル・ヘイグラーさん(32)の活動に同行した。もともと市の衛生作業員で、「ごみが散乱している地域ほど銃犯罪が多く、行政の支援も届かないことを実感した」と言う。「そのほとんどは黒人などの少数派が多い地区だ」とも。

 活動はヘイグラーさんの会員制交流サイト(SNS)から広がり、取材当日は20人ほどの市民が集まった。同市の白人女性ケイトリン・フリッツさん(37)は「こういう新しい芽を支えていきたい」と参加した。新型コロナウイルス禍では、困窮地区への食糧支援を行ってきたという。

 米国の人種差別や経済格差はなお根強いが、それぞれの思いを胸に、こうして地道に道端のごみを拾う人々がいるのも事実だ。フィラデルフィア。ペンが名付けた街の名前は、ギリシャ語の「兄弟愛」に由来する。 (杉藤貴浩)